「パソコンが急に起動しなくなって、見積書も請求書の控えも全部その中なんです」——先日いただいたご相談です。お話を聞くと、「OneDriveを使っているからバックアップは大丈夫だと思っていた」とのこと。ところが、同期していたのはデスクトップだけで、大事な書類は別のフォルダに入っていました。バックアップは「取っているつもり」がいちばん危ないものです。
パソコンのデータが消えるのは、故障のときだけではありません
データがなくなる原因は、大きく分けて次の4つです。
- 故障:保存している部品(SSDやハードディスク)は、ある日突然読めなくなることがある
- うっかり:上書き保存、削除、フォルダごとの移動ミス
- 盗難・紛失:ノートパソコンを持ち歩く会社ほど起きやすい
- ランサムウェア:データを勝手に暗号化して開けなくし、「元に戻したければお金を払え」と迫るウイルス
特に最後のランサムウェアは、IPA(情報処理推進機構)が毎年発表している「情報セキュリティ10大脅威」の組織編で、2026年版でも1位です。大企業だけの話ではなく、取引先経由で小さな会社が狙われる例も多くあります。
「同期」と「バックアップ」は違います
OneDriveやGoogleドライブなどのクラウドは便利ですが、ここに大きな落とし穴があります。
| 同期(OneDriveなど) | バックアップ | |
|---|---|---|
| しくみ | パソコンとクラウドをいつも同じ状態にする | ある時点のデータを別の場所に写して取っておく |
| パソコンが壊れたら | クラウドに残るので助かる | 助かる |
| うっかり消したら | クラウドからも消える(ごみ箱から戻せる期間はある) | 写しから戻せる |
| ランサムウェアに感染したら | 暗号化されたファイルがそのまま同期されることがある | 感染前の写しから戻せる(つなぎっぱなしでなければ) |
同期は「いつも同じにする」仕組みなので、困った変化も一緒に広がります。同期は便利な道具として使いつつ、それとは別に「写しを取っておく」ことが必要です。
目安は「3つ・2種類・1つは離す」
バックアップの世界には「3-2-1」という、昔からある分かりやすい目安があります。
| 数字 | 意味 | 小さな会社での例 |
|---|---|---|
| 3 | データを3つ持つ(元+写し2つ) | パソコン本体/外付けドライブ/クラウド |
| 2 | 写しは2種類の違う場所・違う機械に | 外付けドライブとクラウド、など |
| 1 | そのうち1つは離しておく | 外付けドライブは取ったら外す。または事務所の外(クラウド)にも置く |
大事なのは最後の「1つは離す」です。外付けドライブをつなぎっぱなしにしていると、ランサムウェアはそちらのデータまで暗号化してしまいます。バックアップを取ったら、ケーブルを抜いて引き出しにしまう。これだけで守れる範囲が大きく変わります。
今日できる、3つの確認
- 大事なデータがどこにあるかを書き出す
見積・請求・顧客名簿・会計ソフトのデータ・メール。意外と「デスクトップ」「ドキュメント」以外の場所や、会計ソフト独自のフォルダに入っています - クラウドで守られている範囲を見る
Windows 11なら「設定」の「アカウント」→「Windows バックアップ」で、OneDriveに入っているフォルダが確かめられます。デスクトップとドキュメントだけ、ということがよくあります - 写しから1つ、実際に戻してみる
バックアップは戻せて初めて意味があります。適当なファイルを1つ、写しから開けるか試してください。年に一度でも十分です
外付けドライブへのバックアップは、Windowsに入っている機能(ファイル履歴など)や、ドライブに付いてくるソフトで自動にできます。「毎週金曜の帰りに差して、終わったら抜く」のように、曜日と担当者を決めてしまうのが続けるコツです。
パソコン以外も忘れずに
小さな会社で見落としやすいのが、パソコンの外にある大事なデータです。
- ホームページ:制作会社やサーバーにしか元データがない、というのはよくある話です。どこにあるか、誰が触れるかを確かめておく
- メール:サーバーに残す設定か、パソコンにだけ保存する設定かで、壊れたときの結果が変わる
- スマートフォンの写真:現場やお店の写真は、仕事の記録そのもの
私達の現場から
私達も、図面やホームページのデータはパソコン・事務所の共有ドライブ・事務所の外の3か所に分けて置いています。共有ドライブには、ファイルを日ごとの状態で残しておく機能を使い、うっかり上書きしても前日の状態に戻せるようにしています。
ホームページ制作のご相談では、「前の制作会社と連絡がつかず、サイトのデータがどこにあるか分からない」というお話も少なくありません。私達が制作・管理するサイトは、データの保管場所と管理画面への入り方を、お客様にもお渡しするようにしています。いまのホームページのデータがどこにあるか分からない、という場合も、お気軽にご相談ください。
まとめ
- データが消える原因は故障・うっかり・盗難・ランサムウェアの4つ。ランサムウェアはIPAの10大脅威(組織編)で2026年も1位
- OneDriveなどの同期はバックアップではない。消したものも、暗号化されたものも同期される
- 目安は「3つ・2種類・1つは離す」(3-2-1)。外付けドライブは取ったら外す
- 今日やること:データの場所を書き出す/クラウドの範囲を見る/1つ戻してみる
- ホームページ・メール・スマホの写真も、どこにあるかを確かめておく